全国童貞連合という中年童貞コミュニティ

中年童貞

 

「ルポ 中年童貞」とは別に、同じ「中年童貞」というタイトルで書籍が発売されていました。

今からもう十年以上も前に発売した「中年童貞 〜少子化時代の恋愛格差〜」(2007年6月発売)という書籍です。

著者は自らも童貞でありながら「全国童貞連合」という組織を立ち上げ、そこで会長(現在は名誉会長)をつとめている渡部伸氏です。

全国童貞連合とは?

「全国童貞連合」略して「全童連」。童貞の童貞による童貞のための組織…かどうかはわかりませんが、書籍発売の8年前の1999年に誕生した組織です。会長が友達4人と一緒に立ち上げたそうです。加入者はもちろん全て童貞の男性。

ちなみに1999年当時、私は15歳で中三から高一になる年でした。当時はまだインターネット黎明期の頃だったので、全童連の存在は全く知りませんでした。

会長はどんな人?

会長の渡部氏は1973年に福島県で生まれ、東京で広告デザイナーをしています。正直童貞とは思えないようなおしゃれで知的な職業です。本文を読んでみても、知的だなと思わせる場面がいくつか見られます。でもやっぱり童貞だなと感じる部分も多いです。童貞ならではの考え方であったりエピソードであったりと、童貞たる所以がわかります。

書籍の最後に書かれていた、当時組んでいたバンドのメンバーに告白したエピソード(結婚前提の交際を申し込むもありえないと一蹴され号泣してしまう)も切ないけど、気持ち悪いな思う部分もまあまああります。あと所々でオナニーしすぎ(笑)

書籍の中で扱っている話題

書籍の中では、童貞問題は少子化問題だと考える著者が、現在の自由恋愛社会による晩婚化やお見合いによる結婚の減少について語りつつ、どのようにして中年童貞が生まれるのか、などの部分に言及しています。

モテない男たるモテない所以が理解できます。だけど共感できるところもたくさんあったし、人によっては、努力以前に、先天的な問題もあるよなと。

文中にあった箇所をいくつか引用しますと、

 

「やがていつかは恋人ができて結婚するのだろう」

→これは私も思っていました。ある程度の年齢になってちゃんと仕事をしていれば、そんなに苦労なく結婚できるんだろうなと簡単に考えていました。そもそも彼女ですら、高校生になったら、専門学校に行ったら、社会人になったら、できるんだろうとずっと思っていたけど願いは叶わずでした。恋愛難すぎ。

 

コミュニケーション能力以前に、単純に女性と話ができない。

→幸いにも、私は女性と話すこと自体には苦手意識はありません。なのでこれに関しては共感はできませんが、ここまでのレベルだと努力云々それ以前の次元。そんな感じさえします。訓練でなんとかならないとも思いませんが、この段階の人にコミュニケーションスキルを磨け!努力が足りない!と軽々しくいうのはあまりにも酷ではないでしょうか。

 

類は友を呼ぶ。モテない男の周りのは、モテない男が集まり、さらに恋愛やセックスから遠ざかっているという現実は否定できない。

→これでもかというくらいの負のスパイラル。でも一緒にいるのは同じ境遇や考え方を持った人達なんで、居心地がいいんでしょうね。それだけに厄介でもありますね。抜けるに抜けられない。

中年童貞より根深い中年処女の問題

本書では中年童貞だけではなく、中年処女の問題にも触れていました。実際に中年処女だと名乗る女性から全童連に連絡があったらしいです。実は中年童貞よりも根深い問題だと会長は言及していました。

確かに男性の場合、童貞はまだ笑いやネタにできる部分があることを否定できません。世の中にある童貞企画を見渡してみても、そういう感じは伝わってきます。

だけど、これが女性となると、処女となると話が変わってきます。少なくとも同列には扱えない。さらに同じ処女でも、若ければ価値あるものと見られるけど、中年処女となると腫れ物に触るような扱いなのでしょうか。

「全国処女連合」の設立についても当初は検討案があったらしいのですが、やはり色々と問題があって断念せざるを得なかったようです。本当に根深い問題だと思います。

卒業生と現役会員たちの確執

全童連は同じ童貞の人達の集まりですが、その中でも、童貞を卒業できる人もいればできない人もいてと、やっぱり差はあるようです。

全童連のサイトに登録している童貞達は、女性からの人気投票とメッセージを受けることができ、投票の結果によりその時々の「人気童貞ベスト10」が表示される。メッセージもやりとりも自由なので「出会い系」としての機能も果たしている。これにより、全童連のサイトを通じて童貞喪失を達成した人が相当数いるようです。「童貞である」ということを前提に女性と出会っているので、童貞であるということが一番の共通の話題となり、ことの進展が早い。そのいうことらしいです。これは入会する大きなメリットですね。

ただ、驚くべきは童貞を卒業した途端に態度が豹変する人もいるようなのです。「お前らもっと頑張った方がいいよ」と未だに童貞の人たちに上から目線で言い放ったり、それどころか「早くデータ消してください」と所属していた過去を恥ずかしがりその事実を消したがる人もいたりと。ある意味では意味人間らしくもあるけど、なんとも残念。

童貞連合内に存在する3つの派閥

会員は皆童貞。それは共通していますが、とはいえ決して一枚岩ではないようです。というのも、その中には様々な思想を持った人がいるからです。全童連の中には3つの派閥が存在しています。

改革派

会長をトップとしたシンプルに童貞を捨てたい、セックスしたいという一派。

保守派

Y氏

アニメやライトノベルをこよなく愛する29歳の小柄な青年。自身の外見はキモいし、いじめられ迫害された末、内面も歪んでしまっている。童貞であることを積極的に肯定し、童貞を捨てるメリットを感じない、モテない男には恋愛は無理だから諦めよう、三次元の女なんて二次元に比べれば汚らわしい、など恋愛や女性に対する呪詛を語り続けてやまない。モテるために努力すること自体否定しており、会長と意見が対立している。

A氏

某大新聞社のエリート社員31歳。京都大学法学部。高身長の美青年。年収1000万円超で経費も使いたい放題。人柄の良い、いわゆる勝ち組でモテない要素が見当たらない人物だが、そもそも恋愛する意義を感じていない。むしろ、どうして人間に生まれただけで、みんなが恋愛をしなければならないのか?と恋愛にはかなり否定的。現代の日本での恋愛というレースにも加わりたくないが、結婚はしたいし(仮に離婚したとしても)子供は欲しいと願っている。

解脱派

爽やかな好青年の27歳派遣社員。保守派から派生した一部の過激派で「童貞で苦しむくらいなら、性欲をなくしてしまえ」という主張の持ち主。一日三回、休日は一日中オナニーしていた時期もあったが、いつからか虚しさを感じるようになり、さらには性欲が邪魔だと思うようになり、女性ホルモン剤を購入し服用し始める。その弊害で胸が膨らむも、性欲がないとこんなに楽なんだ。世の中の見え方や考え方が変わる。などメリットも多く感じている。女性を好きという感情と性欲は別物だと主張。また、どうして男ばかりが恋愛で努力を強いられないと行けないのか?性欲さえなくせば、そんな努力も必要ない。と憤りを感じている。

まとめ

基本的に皆賢い人達だとは思います。あと保守派と解脱派の三人というか、この手の人達に共通するのが、女性や恋愛自体を嫌悪していたり(保守派の二人はそう)。以下のような言葉をよく使う傾向にあります。

・なんで男ばかりが努力しなければならないのか?

・そもそも努力する価値も得られるメリットもない。

・効率がどうのこうの〜

保守派、解脱派の言い分としても共感できる部分は多いですが、それでもやっぱり会長のような、童貞を卒業したいセックスしたいと悩む方が自然な感じがするし、それに向けて努力する姿にも大いに共感します。

それでも会長が風俗に行かない理由

童貞で悩んでいる人に対し、とりあえず風俗に行けばいいだろうという意見は少なくありません。私もその意見には概ね同意します。童貞で居続けることでずっと自分に自信がモテないというのは、今後の人生を考えたらマイナスだと思うからです。だったら方法にはこだわらずに童貞を卒業した方がプラスではないでしょうか。

ただ、それでも会長は、女性と仲良くなったうえでセックスをしたい、と言っています。セックスに至る関係性にこそ意義がある。恋愛関係を作るというベクトルに、人間としての成熟や人格形成、相互理解に向けたよきものがあるではないか。そう考えているのです。

少なくとも本書を読んだだけでは会長の真意はわかりかねますが、常人にはわからない強いこだわりがあるのかもしれません。

座談会(全童連vs室井佑月、F・ヤマグチ)

会長と保守派のA氏、作家の室井佑月氏、マーケットアナリストで恋愛投資家でもあるフェルディナント・ヤマグチ氏の4名による、恋愛がテーマの座談会。

この座談会の様子が本書で紹介されていました。

恋愛経験が乏しい前者と豊富な後者といった構図ですが、終始噛み合わない議論が印象的です。特に保守派のA氏と室井佑月の激しい議論。

詳しい内容については触れるのは控えますが、室井佑月の発言でこれは真理だなと思うものがありました。この人のことは基本的には嫌いなんですけどね。政治討論番組ではおかしなこと言ってるし。この座談会でもごちゃごちゃうるせえなって思うことがたくさんありましたが。

ただ、それでも、

 

「恋愛という意味のないことをすることに意味があったりする。」

 

「恋愛」っていう文脈に限らずですが、意味のないことをすることに意味があったりする、というのは真理だと思いました。

 

参考書籍

 

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